楽しいことを探そう!とうもろこしマーケティングで新たな話題を生み出す──楽紫

2019.11.06

深紫色は多くの商品の中においても際立って目を奪うほど神秘的であり、面白いほど人の注意を引きます。瓶が入っていると思われる段ボール箱に目をやると、実はそれは直立させて一本一本置いてある「黒宝紫糯とうもろこし」であることがわかります。このようなデザインは人にビールの短い賞味期限と、飲む時の楽しさを思い起こさせます。案の定、包装の上部下部共に「新鮮な内に手で持ち帰ろう」のコピーが記されており、その傍らには特色あるフォントで記されたブランド名である「楽紫」が映え、「楽しいことを探そう」というイメージを強調しています。そして、頭にテンガロンハットをかぶった笑顔の若者が、麻縄で作られた円形のタグを手にかけています。

農創:農家だけでなく、クリエイティブデザイナーでもある

若者の名前は胡志宏といいます。逢甲大学大学院建築研究科を卒業後、成功大学で研究助手となりました。また、建設会社、不動産業にも従事しましたが、しばらく仕事して経験を積むと、これらの仕事がもたらす生活は心から望んでいるものではないと常に思うようになりました。2012年に奥様が転勤により故郷で教職に就くこととなったので、胡志宏は奥様と共に台中の清水に行きます。そして、奥様の実家の農作業を手伝うことで、未知の領域へと足を踏み入れます。

彼は初心者であるので新しい知識を吸収し続け、先輩に教えを乞い、技術の改良を進め、2016年には「囍朶農創」を設立しました。日本語の「一番」に由来する「HITO」、そして「農創」の二文字は「農家だけでなく、クリエイティブデザイナーでもある」ことを意味しています。胡志宏は積極的に環境に優しい耕作方法を推し進め、野菜生産販売班の班長に選ばれ、生産販売大使として韓国を訪問しました。自身が果敢に農業の無限可能性を探索し、新しく生み出した考えと行動により、旧来の縛りと形式を打ち破っていくことが期待されています。

囍朶の主要作物は「とうもろこし」です。その農地は風通しがよい場所にあるので、とうもろこしは常に強い風にさらされますが、耐え忍んでいます。胡志宏は「妻が紫糯とうもろこしを食べるのが好き」であることから喜んで困難な作業にも従事しており、この理由はとてもロマンチックです。しかし、胡志宏が農業に従事する本当の心意は、「作物は主に家族のために栽培するというのが原点」というものです。囍朶の紫糯とうもろこしと一般の糯とうもろこしを比較すると、とうもろこしの粒に僅かな粘りがあり、甘みで溢れ、弾力のある食感なので満腹感を得やすい点です。また、胡志宏はアントシアニンが身体にとって有益であることを知っていたので、「黒宝紫糯とうもろこし」が囍朶を認知してもらうための重点となりました。

青年農家の立場で観察することで、ブランド名が誕生

近年、台湾農業の新たな商機を切り開くため、農業委員会は特に小規模農家のeコマース市場への参入に力を入れています。「Ideamax Design」ではプラン作成のために胡志宏の農場を訪れると、農場が草で豊富に茂っていることに気付きました。胡志宏は農薬を全く散布しない草生栽培法を取り入れており、残留農薬に対する疑念を完全に取り除いています。そして、とうもろこし畑において最も懸念されるのはアワノメイガの侵襲であり、胡志宏はフェロモンを利用して対応しています。また夏季の害虫問題では、バチルス・チューリンゲンシスを使用して抑制しています。畑地には多くのテントウムシがおり、テントウムシはアブラムシを食べるので、自然に生態系の平衡が形成されます。また、Ideamax Designは胡志宏が何でも自分でやる事に気付き、収穫から出荷までを一手に引き受けています。「自分の好きな事をできるのは、とても楽しい」と話す内容からは、青年農家としての自在や満足が垣間見えます。

これら観察の成果と黒宝紫糯とうもろこしの特質を合わせることで、「楽紫」というブランド名が誕生しました。「楽子」と同じ発音であり、ブランド名に活発さをもたらすだけでなく、「囍朶」の文字と呼応することで初心を表わし、胡志宏の農地に対する情熱と楽しさに近づけています。「紫色の作物」の発想が、「新鮮なうちに手で持ち帰ろう」の概念が形成されました。Ideamax Designと胡志宏は従来の生鮮とうもろこしの販売モデルを打ち破り、とうもろこしマーケティングという新しい話題を創り上げることに成功しました。胡志宏は新ブランドである「楽紫」が台湾の農作物に新しいスタイルを与えることを望み、これらの健康的で栄養のある作物が普及し、より多くの消費者に理解してもらい目に留まることを期待しています。